「旅支度」とは
仏式のご葬儀で「旅支度」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
「旅支度」の意味や、その際に身に着けるもののご案内です。
四十九日の旅
仏教の教えでは、死後49日間(中陰)は
現世とあの世の間をさまよっていると考えられています。
この間、故人の魂は7日ごとに閻魔様の審査を受け、
最後の7回目が49日目となり、
この時に、魂が極楽浄土へたどり着けるかが決まるとされています。
この来世までの旅を無事に終えることができるように、
残されたご家族で旅支度を整えます。
何を揃えればいいの?
【仏衣(ぶつい)】
故人様にお着せする着物のことで、
白装束(しろしょうぞく)、経帷子(きょうかたびら)とも呼ばれます。
着物は右前で着るのが通常ですが、旅支度の際は、左前に着付けます。
(左前:先に左の身頃、続いて右の身頃を重ねる)
【足袋(たび)】
白い足袋を左右逆に履かせて、紐は縦結びにします。
【脚絆(きゃはん)】
脚絆をすねに付けます。すねを守り、疲れにくくする役割があります。
紐は縦結びにします。
【手甲(てっこう)】
外傷や日射、寒さから手を守る手甲を、手元につけます。
紐は縦結びにします。
【頭陀袋(ずだぶくろ)】
頭陀袋は僧侶が修行等に出る時に使うもので、経文やお布施を入れるものです。
旅支度の際には、ここに三途の川の渡し賃である六文銭を入れます。
現代では六文銭を用意することが難しいので、
六文銭を印刷した紙や金額を書いた紙などを入れて、
頭から通して首にかけ、胸元に置きます。
【数珠(じゅず)】
数珠は持っているだけで功徳があるとされています。
故人様が愛用されていたものか、旅支度用に用意したものを持たせます。
【天冠(てんかん)】
故人の額に付ける三角頭巾です。
「閻魔様に失礼にならないように正装をする」
「冠をつけることで高貴な身分を表す」など、諸説あるようです。
現在では、額につけずに、編み笠と一緒に頭元に添えるのが一般的になっています。
【編み笠】
雨や雪、日射から身を守る笠です。
天冠と一緒に、頭元に添えます。
【草履(ぞうり)・わらじ】
本来は足に履かせますが、直接履かせることが難しい場合は、足元に添えます。
【杖(つえ)】
故人様の利き手に添えます。
愛用していた杖を持たせたいというお考えもありますが、
材質によっては難しい場合もあるので、
旅支度用に用意した木製の杖などを持たせます。
*これらの旅支度は、全て博善社でもご用意が可能です。
(ご宗派によりご用意するものが変わることもありますので、
お寺様に確認をしましょう。)
仏衣の色やスタイル
仏衣が白いのには諸説ありますが、
日本では「紅白」のように赤と白との対に意味を見出し、
「赤」は赤ちゃんのように誕生を表し、白は「死や別れ」を表すという考えがあります。
古くは日本では、喪服の色も白とされていました。
他にも、「世俗に染まらず純粋な気持ちで旅をする」という意味とする考えもあります。
昔は、故人様と血縁関係のある女性が縫って用意していた仏衣。
現代では出来合いのものを準備されることがほとんどです。
仏衣そのものにも変化が見られ、白い着物だけでなく、
色味のあるものや、デザイン性の高いものもあります。
また、故人様の愛用していた洋服など、お好きなお召し物を着せるケースも増えてきました。
着物など、着せることが難しい場合は、上から掛けてあげる場合もあります。
浄土真宗では旅支度は行わない
仏教の中でも、浄土真宗の教えでは、死後、すぐに極楽浄土へ向かうとされ、
来世への旅には出ないので、旅支度は必要ないとされています。
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